スナック眞緒物語#5



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こんにちは。
スナック眞緒物語のお時間です🕑


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カランコロン。
「あら、いらっしゃい。」
お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
「こんにちは。」
小首を傾げながら店内をぐるりと見回しているのは30歳くらいの女性だった。
「こちらへどうぞ。」
バイトのまなもに促され、カウンターに座る。すると、眞緒ママがにっこりとして
「まなも〜!この子に“アレ”出してあげてちょうだい。」
と言い、パチっとウインクをする。
「“アレ”ってママお手製カクテルですよね?そろそろ作り方覚えてくれないと、バイトお手製カクテルに名前変えますよ?」
とバイトのまなもが肩をすくめながら言う。そしてついでのように
「あ、あと、ウインク、出来てないですよ。」
と付け足し、パチンと完璧なウインクを投げた。
女性は目の前で繰り広げられるやりとりに曖昧に微笑みながら、出されたカクテルを少し口に含む。
「それで、何か悩みがあったから来たんじゃないの?」
真緒ママが尋ねると、女性は目を伏せた。
「私、このままでいいのかなって不安なんです。ずっと女優目指してバイト生活をしていて、女優としては芽が出てないけどバイトは順調で満足していたんです。だけど、友達はどんどん結婚して子供ができてきて。そして気づいちゃったんですよね。」
女性はパッと顔を上げた。
「私の人生、何にもないって。気づいたら夢追ってる時間より、バイトしてる時間の方が長かった。今の私は、生きるために生きてるみたい。そんなの意味あるのかな。」
眞緒ママは、自嘲気味に微笑むその女性に目の前にあるチケットを置いた。
「そんなあなたにぴったりの舞台があるの。『マギアレコード』って言うんだけど、その千秋楽のチケットよ!きっと気にいるはず!」


眞緒ママとバイトのまなもに連れられて赤坂ACTシアターに来た女性は、静かに涙を流しながら舞台を観ていた。
「あぁ、思い出しました。」
女性が涙を拭う。
「私はこの感動に憧れて、女優を目指したんです。一つの素晴らしい舞台を作り出すというこの感動を!」
眞緒ママが優しく頷いた。
「舞台を作っているのは女優だけじゃないはずよ。スタッフさん達が支えてくれて、ひとつの舞台は作られている。ねぇ、スタッフとして舞台を作っていくのはどうかしら?」
女性は目をまだ潤ませながら、曇りのない真っ直ぐな笑顔で
「はい!」
と頷いた。


数年後。
スナック眞緒にある一通の封筒が届いた。
中には、松田好花主演の舞台のチケットが2枚入っている。
そしてその舞台の演出の欄には、あの時の女性の名前が書いてあったのだった。


今日もスナック眞緒は大繁盛♪



原案:井口眞緒 文:宮田愛萌
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好花、京子さん、菜緒
舞台頑張って下さい!!!!



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