スナック眞緒物語#6



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こんにちは。
スナック眞緒物語のお時間です🕓



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カランコロン。
「あら、いらっしゃい。」
お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
「失礼します…あ、まちがった…」
ぽそりと小声で言いながら入ってきたのは、華奢な女子大生だった。
「あら、貴女初めてよね!まなも、特製カクテルをだしてあげて!」
ママが笑顔でまなもを呼び、まなもは特製カクテルを差し出した。


「5年…。」
「え?」
「5年付き合ってたんです。2人とも初恋で、一緒に上京してきて。それに大学も学部も一緒だったの。このまま結婚するって思ってた。」
そこまで言って、女子大生はカウンターに突っ伏して泣き出した。眞緒ママとバイトのまなもは顔を見合わせる。
「これは…酔ってるわよね?」
「酔ってますね……でもあの子カクテルまだ飲んでないですよね…?」
ひそひそと話す2人に訴えるように女子大生の声が大きくなった。
「それなのに!君は強いから大丈夫だよねって!君よりもっと守りたいと思う女の子が出来ちゃったんだって、急に。しかも相手が同じ大学の英文科の大人しそうな女の子。」
思いついたように出来事を泣きながら断片的に話す彼女の悩みは、つまり、5年付き合った彼氏に振られたということらしい。
「私ずっと彼のために生きてきたんです。大学のレベルだって落とした。学部も彼にあわせて興味なんて無かった経済学科。…まあ経済楽しかったけど…でも何が悪かったのかなぁ…どうすればいいのかなぁ。」
一連の話をきいて、バイトのまなもは肩をすくめて眞緒ママを見た。眞緒ママは自信たっぷりに口を開く。
「それはね、別れられて良かったわ!これは彼からの解放よ。きっと今まで知らなかったことがたくさん見えるようになるはず。恋人に頼らずに生きていけるようにならなくちゃ!あ、そうだ!明日スナック眞緒を手伝ってみない?」
「え⁉︎」
女子大生はハッと顔をあげた。一瞬で酔いが覚めたようだった。まぁ、もともと酔ってないのだが。
「うちにはたくさんの人がくるから、もしかしたら新しいことがわかるようになるかも。」

次の日。
カウンターの中で女子大生はくるくるとこまねずみのように働いていた。
「眞緒ママおはよー」
「あら、彩ちゃんじゃない。どうしたの?」
ドアの方に目を向けると、そこにはメガネをかけて微笑む高本彩花が立っていた。
「遊びに来たよ〜」
バイトのまなもが特製カクテルではなく、特製スムージーを差し出す。
「彩ちゃんは今度TOKYO GIRLS COLLECTIONのランウェイを歩くんです。」
「すごいんですね!……ランウェイかぁ…そういえば私、昔はデザイナーになりたかったんですよね。いつか私の服を着たモデルさんがランウェイを歩いてくれたらって。」
何気なく語った彼女に、眞緒ママが言った。
「それ、今からでも遅くないんじゃない?」
「えっ…」
女子大生は戸惑う。しかし、眞緒ママや彩ちゃんから笑顔で見つめられ、その戸惑いは決意に変わった。
「はい!私、頑張ります!」

数年後。
とある雨の日の夜。少しやつれた男性がスナック眞緒を訪れた。
「眞緒ママ、ちょっと昔の話を聞いてくれるか?」
ママ特製カクテルを片手に彼は話し始める。
「俺の昔の彼女がちょっと有名なデザイナーで…5年付き合って、一緒に上京して、でも俺は他の人に目が眩んで振ったんだけど。今日すれ違ったんだけどな、あいつ…本当にいい女になってたな…」
それを聞いたバイトのまなもはこっそりと微笑み、眞緒ママは目をキラッと輝かせるのだった。


今日もスナック眞緒は大繁盛♪    


原案:井口眞緒 文:宮田愛萌

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スナック眞緒#6