スナック眞緒物語#7
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こんにちは。
スナック眞緒物語のお時間です🕑
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カランコロン。
「あら、いらっしゃい。」
お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
入口で立ち止まっている男性を、バイトのまなもがさりげなく店内へと促す。席について店内をぐるりと見回した男性は、ぼそりと呟いた。
「…そうにゃん?」
眞緒ママがその言葉にピクリと反応をする。
「貴方も相鉄線好きなの?私、相鉄線が大好きでね、私の夢や青春が詰まってるのよ。色んな駅に思い出があるわ!」
うっとりと昔を思い出して語り出した眞緒ママに対して男性は嬉しそうににっこりと微笑んだ。
「ありがとうございます。実は僕、相鉄線の運転手なんです。今日も仕事の帰りで…」
「まあ!!!」
眞緒ママと男性は楽しそうに話しはじめた。その様子をバイトのまなもがにこにこと眺めながらも仕事をする。久しぶりに穏やかで賑やかな夜だった。
「まぁまぁ、飲んでちょうだい。まなも〜!ママお手製カクテルお願い!そういえばあなた、彼女はいないの?」
話が盛り上がっている中、ふと思い出したように眞緒ママが尋ねると男性が頬を赤くした。
「その様子じゃ、いるのね!」
「い、いえ、好きな人というか、まだ好きなのかも全然わからなくて。……この歳になって初恋なんです。今まではずっと仕事一筋、電車が恋人だったんですけど。」
「どんな人なの?」
眞緒ママが興味津々な様子で尋ねる。
「車椅子の女性で、毎朝電車に乗る手助けをしているのですが、いつも幸せそうな笑顔でいるんです。そういうところがいいなぁと。」
「そうなの!いいわね!」
うんうんと頷きながらも眞緒ママはなにかを考えているような顔をしていた。
男性が帰った後。
眞緒ママはバイトのまなもに言った。
「ね!その女性に会いにいかない?」
「またそうやって!」
バイトのまなもはため息をついた。
「あの人かしら!あの髪の長い女性!」
駅のホームの柱の陰でこそこそと、しかししっかりとはしゃいで話す眞緒ママとバイトのまなもは明らかに怪しかった。
「…というか、昨日散々反対した癖に来てるじゃない。」
にやにやと笑う眞緒ママに、バイトのまなもは少し頬を膨らまして言った。
「だって私だって見た…じゃなくて、眞緒ママが何かやらかさないか心配だからです!」
「そう〜!じゃあ私あの人と話してくるからそこで見守っててちょうだい!」
眞緒ママはそう言うと、バイトのまなもがとめる間も無く女性の元へ走っていった。
「こんにちは!私スナックのママをやっているのだけど悩みとかないかしら!」
突然話しかけてきて明らかに怪しい眞緒ママに、女性は少し怪訝な顔をするが、すぐにふんわりと微笑んだ。
「こんにちは。スナックのママをやっているの?お若いのに素敵ね。でも悩みといっても…」
「恋の悩みとか!」
「恋…あ、私じゃなくて息子なんだけどね。けやき坂46の柿崎芽実ちゃんに夢中なのよ。番組を見ててもウインクとか小悪魔っぽい可愛さがいっぱいで……」
くすくすと笑いながら息子の話をする女性の左手の薬指には指輪がキラキラと光っていた。
数日後。
再びやってきた相鉄線の運転手の男性に眞緒ママは言った。
「そういえば、あの女性とはどうなったの?」
「この間旦那さんと息子さんと電車に乗っているのを見かけてしまって。あんなに魅力的ですから…」
そう寂しそうに言う男性の手を取り、眞緒ママは勢いよく言った。
「今回はダメだったかもしれない。でも、貴方は人を愛する心を知ったわ!それはとっても素敵なことよ。今日は一緒に飲みましょう!まなも〜ママお手製カクテルを2つお願い!」
「またママも飲むんですか!?…もう。今日は特別ですからね。」
「とかいってまなもも自分の分作ってるじゃない!」
「なんでこんな時だけ見つけるんですか!普段私が作ってる時はお客様とおしゃべりしてる癖に!」
男性はその賑やかな様子をみて、楽しそうにカクテルを飲むのだった。
今日もスナック眞緒は大繁盛♪
原案:井口眞緒 文:宮田愛萌
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スナック眞緒#7