スナック眞緒#8


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こんにちは。 
スナック眞緒物語のお時間です🕓

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カランコロン。
「あら、いらっしゃい。」
 お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
「こんにちは〜!」
戸惑ったような顔をして立っている客が多い中、明るい声で挨拶をして現れたのは、整った顔立ちの楚々とした若い女性だった。女性は店内を興味深そうに見回した後、カウンター席に腰掛けた。
「まなも、この子にママお手製カクテル作ってあげて!」
「……はーい」
バイトのまなもは、ママのお手製を自分が作っていいのかというツッコミを入れることすら諦め、軽く眉を上げてカクテルを作る。透き通ってとろりとした液体は照明の光を浴びてキラキラと光っていた。女性の目の前にコトンとカクテルを置くと、女性は耐えかねたように
「いや作ってるの確実にママじゃないですよね!」
とツッコミをいれた。
「あら、貴女結構ノリ良いのね。いいわ!サービスしちゃうわ〜」
眞緒ママがキャッキャとはしゃぎ、スナック眞緒の店内は一気に華やいだ雰囲気になった。
 「なんか、最近とっても退屈なんですよね」
女性がカクテルを飲みながら呟く。
「あら、どうして?」
「いや、ほら、なんかわかると思うんですけど、私って可愛いじゃないですか。声も綺麗だし」
「貴女…すごい自信ね」
眞緒ママは肩をすくめた。
「ふふ。事実ですから。しかも私、頭も良いんです。だから人助けしようと思って医師になったんですけど……なんだかんだ楽に仕事もやってこれちゃって。周りの人が優しいおかげですけどね」
 女性は滔々と語る。丁寧な物腰に、ゆったりと話す柔らかな声。話の内容さえ聞かなければ、まるで美しい午後のティータイムの穏やかな会話を聞いているかのようだった。
「あなたね、もっと苦労するべきよ!そんなんだから退屈なんだわ。そうだわ!世界一周してみたらどうかしら?色々な世界を見たら変わるかもしれないわ」
眞緒ママが腕を組んで頷く。真面目な顔を作ってはいるが、若干口元が緩んでいて面白がっていることがわかった。
「そうですか?うーん……そんな風に言われたら行ってみるのも楽しそうですね!世界一周!お金はたくさんありますし。」
ふふっと口元を抑えて優雅に笑ったその女性は、その場で航空券を予約して帰って行った。
「嵐のような人でしたねぇ」
バイトのまなもがぼそりと呟いた。


 数年後。
「眞緒ママ!まなもちゃん!お久しぶりです」
と急にお店のベルを鳴らして入ってきた女性は、肌は健康的に日焼けをしていたが相変わらずの美しさを持ち、前に来た時と変わらずゆったりと微笑んで立っていた。
「………あら、あら!!久しぶりじゃない!どうしたのよ急に」
眞緒ママは、一瞬忘れていたがすぐに思い出し驚いたような歓声をあげる。
「私、あの後すぐに言われた通りに世界一周したんです。でも、なんだかつまらなくなってしまって。だから途中でボランティアみたいな人に付いていって、手伝ったりしていたんです。でも私が行くと村はどんどん豊かになって、感謝されまくってしまって。」
バイトのまなもがスッと“ママお手製カクテル”を差し出した。
「あ、ありがとうございます。やっぱり、私って何してもラクショー、なんですよね。」
そう言いながらぐいっとカクテルを飲む。
「相変わらず美味しいですね。ママ“お手製”カクテル!あーあ、なんかもっと楽しいことないですかね。」
女性は首をぐるりと回す。それを見た眞緒ママがにやりと笑って言った。
「でも性格だけは私の勝ちね」
女性はそれを聞いて「違いないですね」と、旅立つ前とは違って大きな声をあげて笑った。


今日もスナック眞緒は大繁盛♪


原案:井口眞緒 文:宮田愛萌
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