スナック眞緒物語#9
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こんにちは。
スナック眞緒物語のお時間です🕑
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カランコロン。
「あら、いらっしゃい。」
お店のドアのベルが鳴り、スナック眞緒の店内に眞緒ママの甲高い声が鳴り響く。
「眞緒ママーこんにちは!」
眞緒ママに負けず劣らず明るい声を響かせてきたのは看護学校に通う女子学生だった。時々遊びに来る常連客のうちの1人で、お酒は飲まないが楽しそうにジュースやカフェタイムに出していたスムージーを飲んで帰っていく。
「あら、実習が始まるからしばらく来れないって言ってなかった?」
「そうなんですけど!今日は大ニュースがあるんです!実習先の隣の科の先生のことが好きになっちゃって…でもそしたら今日先生が今度ご飯行こうかって連絡先くれて!」
女子学生は息継ぎもせずに一気にまくしたてた。目は爛々と輝いている。
その様子を見て、眞緒ママとバイトのまなもはため息をついた。
「そんなこと言って…だって貴女、恋愛運ゼロで、好きになる人はロクでもない人ばっかりなんだもの…」
バッサリ言われて女子学生はシュンとする。
「そう、なんですよね。だから、今回は2人に相談したかったんです。本当に素敵な方なんです。看護師さんや患者さんからの信頼も厚いし。」
眞緒ママとバイトのまなもは顔を見合わせた。
「まぁ…そんな風に言ってくれるなら…」
「私に任せてちょうだい!ちょうど最近歳のせいか腰が痛かったのよ!」
女子学生は嬉しそうににっこりと微笑むと「ありがとうございます!じゃあ朝早いので」と言って帰っていった。
翌日、眞緒ママは意気揚々と女子学生の実習先へと向かった。
「あ!あの先生じゃないかしら!」
受付を済ませる呼ばれるのを待っていると、診察室から先生が出てくるのが見えた。
「そうですね!」
「よし!まなもいってきて!」
眞緒ママがウインク(もどき)をするとバイトのまなもはため息をついた。
「いってきてって、バイト遣いが荒くないですか!?……というかあの先生の薬指…」
バイトのまなもの声が低くなる。
「結婚指輪ね」
眞緒ママが確信を持ってはっきり言った。そして2人は「やっぱり」とため息をついたのだった。
「眞緒ママ〜!こんにちは!」
「あらいらっしゃい」
再び女子学生が来ると、いつも通り眞緒ママとバイトのまなもが迎えた。
「あのね」
眞緒ママが女子学生に言った。
「私やっぱり考えたんだけど、貴女今は勉強に集中するべきじゃないかしら!貴女は看護師になりたいという夢がすぐそばにあるのよ。だったらまずは夢を叶えて、恋愛はその次でいいんじゃないかしら」
「そう…ですよね!まずは立派な看護師になります!」
女子学生は真っ直ぐに頷く。
「きっと一人前になった時、貴女の隣にはもっと素敵な人がいると思うわ!」
数年後。
「眞緒ママ〜プロポーズされましたぁ!」
パタパタとスナック眞緒の店内に駆け込んできたのは、今はあの大学病院で婦長となったあの女子学生だった。左手に光る華奢な指輪が眩しい。
「わぁ!素敵!」
「じゃあ今日はお祝いね!一杯サービスするわ!」
眞緒ママとバイトのまなもは口々にお祝いをする。女子学生は満面の笑みで言った。
「あの時眞緒ママの意見を聞いて、勉強頑張って良かったです!」
そういえば。あの時の先生は、不倫がバレて離婚し、職も追われたということが風の噂に聞こえたのでした。
今日もスナック眞緒は大繁盛♪
原案:井口眞緒 文:宮田愛萌
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